最近、デリバティブ業界、数理ファイナンス業界で話題になっている論文、 または、個人的に興味を持った論文をリンクします。

Local-Stochastic Volatility for Vanilla Modeling: A Tractable and Arbitrage Free Approach to Option

内容紹介

SwaptionやCap/FloorのVanilla Modelとしては、Shifted SABRが広く使われているとされているが、実際にはshiftを含めたSABRのLocal volatilityの部分が銀行独自のものとなっている場合が多い。

このペーパーでも述べられているように、通常のSABRでは、1) リスクでのストレステストに対応できない、2)高いストライク部分のVolをコントロールできずCMSのフォワードに合わせられない、3) 低いストライクで、バタフライの価値が負になるエリアが発生する という現象が起こる。

ここでは、LV部分を 1)SABRのLVであるmax(F+shift,0)^betaをスムージングしており、2) betaもフォワードの関数にしている(金利が高くなればよりLognormal)。

このペーパーのメインの主張は、SABR型(対数正規)のSVだけで、どんなLVにも対応できる、正規分布の分布関数だけバニラオプションの(精度のよい近似の)解析解が計算できるというものだ。この近似解はHagan近似よりかなりよくarbitrage-freeであり、NormalにするとNumerixのAntonov(いまは確かDanske)らが提唱しているNormal SABRの厳密な解析解(計算はExpensive)とほほ同じとなる。

なんといってもこのモデル(枠組み)の最もよい点は、HaganらのペーパーやAntonovらのペーパよりはるかに簡単に理解できることである。

Consistent XVA Metrics Part II: Multi-currency

内容紹介

XVAのペーパーや書物は、1)XVAの考え方やバックグラウンド、2) XVAのフレームワーク、3) XVAのLSMを使った実際のインプリ の3種類に大別できるであろう。1)のバックグラウンドについては、Gregoryの「The xVA Challenge」が定番でわかりやすいであろう。

XVAのフレームワークに関しては、Burgard & Kjaerの1連のペーパーを奨めたい。デリバティブの初等テキストにあるSelf-financingなポートフォリオを構成することから始めて、無裁定条件からXVAのみたす偏微分方程式を求め、XVAをFeynman-Kac の解で表現する。

ここで紹介するペーパーは、KjaerがBloombergに移り、Bloombergに実装されるより具体的なXVAのフレームワークを示している。どう具体的かというと、1)XVAを株主価値と企業価値と区別して求めることで、XVAのディスカウントをきちんと示している。2) 当初証拠金も考慮した議論をすることで、MVAの導出もしている。3) マルチカレンシーの枠組みで論じているため、クロスカレンシー・ベーシスも陽に表現されている。

KjaerはKVAに関しては、Semi-replicationの枠組みで論じることには懐疑的のようで、ここではKVAの記述はない。

Parameter Averaging of Quadratic SDEs with Stochastic Volatility

内容紹介

Local volをパラメトリックなUnderlyingの2次にして、Heston タイプのStochastc volと融合させたLSV(Local stochastic vol)モデルである。こうすることで、純粋なStochastic volより、smileのダイナミクスをよりよくコントロールできる。

具体的には、Local volの2次項により、Underlyingが動いたときにRisk Reversal がどう動くかといったことまでコントロールできるようになる。要するに、静的なボラティリティ・スマイルのカリブレーションと動的なボラティリティ・スマイルのダイナミクス制御の両方が手に入るわけだ。

このペーパーは銀行でのクオンツ間のインターナルなペーパーの如く、実務上のトリックとその詳細が書いてある。よって、このペーパだけでプログラマーはモデルを構築できてしまう(Calibration部分のみ)。

さらに特記すべきことは、Piterbargの"Parameter Averaging"をより広範囲により厳密に論じており、例えば、Piterbargはゼロとおいていた、UnderlyingとInstantanious varianceの相関についてのParameter averagingの記述もある。

とにかく、Andersenのペーパはいつも実務的で、読んでいて楽しい。

The Kelly Criterion in Blackjack, Sports Betting, and the Stock Market

内容紹介

ギャンブラー(トレーダー)が1/2より大きい確率で勝つ賭け(トレーディング戦略)を見つけたとする。そのとき、自分の資本に対して賭ける(投資する)最適な割合を考える。"Kelly criterion"とは、将来の富の対数を最大化するような割合である。

"Kelly criterion"をコイン投げを使って簡単に解説して、投資やポートフォリオ構築に対しての応用を、著者の経験談を交えて解説したのがこの論文である。BlackjackやSports bettingは題名にあるが、その解説はほとんどない。

Kelly criterion, Kelly portfolio, Growth Optimal Portfolioについて最初に読む論文としては、これを奨める。息をつく暇もなく面白く読めるのだが、計算は自分で確認することを奨めたい。

Kelly criterionで最適化されたポートフォリオをKelly portfolioというが、これはPlaten等の"Benchmark approach"での"Real World Pricing"で実測度でのNumeraireの役割をはたすという事実も興味深い。

SellサイドクオンツからBuyサイドクオンツへの転向を考えている人にもお奨めします。(実際に、ロンドンの友人がこれを読んでBuyサイドクオンツに転向してしまった!!)

Derivatives, Diffusions, and Duality

内容紹介

原資産価格とそのオプションのデルタ・ポジションは双対をなし、それゆえ、オプション価格とキャッシュ借入額は双対をなす。また、時間をオプション満期から反対にとった場合のキャッシュ借入額のみたすBackward PDEは、ヨーロピアン・デリバティブのみたすBackward PDEの双対問題となると主張する。

原問題より双対問題を解くほうが、問題の本質がわかったり問題が効率的にとける場合がある。デリバティブのプライシングや値洗いの際、キャッシュ借入額の問題を解くほうがよい場合があるだろう。筆者は、その例として、デルタに依存するデリバティブのプライシング(例えば、アメリカン・プット・オプションはデルタが-1になれば権利行使すると考えられる。またMVAを計算する際のDynamic SIMM)や1日前のデリバティブの価値から今日のデリバティブの価値をアップデートする場合(満期から新たにBackwardでプライシングする原問題よりはるかに効率的である)等の例をあげている。

最近の、Backward SDEやBackward Ito Integral等の手法を使うので、これらの概念の復習にもなる。

The FVA Puzzle

内容紹介

2012末からの欧米銀行のFVA計上による60億ドルの会計上の損失は実は20億ドルでよかったという記事が2015年の4月に業界専門誌であるRiskに掲載された。FVA論争の第2弾ともいえるFVA計算方法に関する議論は、このペーパーに端を発している。このペーパーで提唱されているFVA/FDAを使うと、現在のFVA計算の主流であるFCA/FBAで計算するよりFVAは40億ドル減るという。

著者の1人であるAlbaneseといえば、Level 3 Financeという誰も理解できない程の難解でスマートなデリバティブの計算手法を提唱しており、弊社でも注目をしている人である。今回のFVAペーパーでも力わざのシュミレーションはあるものの、FVA/FDAの主張の妥当性は抜きにしても、FVAの会計、債券保有者から株主への富の移転、FTP(funds transfer pricing)、規制資本についてよく整理されている。また、リバース・ストレステストやファンディング・アービトラッジまでもかいてあり、FVAに興味のある会計士、クオンツ、リスクマネジャー、トレーダ―、レギュレータの誰が読んでも楽しめる。このペーパーは一読に値する。

Quant History

内容紹介

デリバティブの"クオンツの歴史"を見事にとらえているプレゼンテーションの資料である。現在は、エキゾチックデリバティブの分野だけでなく、金融機関のすべての分野でクオンツが必要となったとの主張は尤もである。

また、クオンツへのアドバイスも随所にみられる。「簡単にわかる(誰でもわかる)....」というような安易な本に頼ることなく、オリジナルのペーパーを読もう。唯一のいい本は、"Numerical Recipes in C"である、等である。

Making and evaluating point forecasts

内容紹介

BaselⅢの新しいマーケットリスクの規制資本計算では、テールリスクをよりよくとらえるとしてExpected Shortfall (ES)が従来のVaRにとってかわられる見込みだ。VaRはリスク尺度としての望ましい性質であるSubadditivityを満たさないことは、多くの実務家にも知られている。ところが、最近になって、ESはVaRに比べてバックテスティングや推定方法が難しいことが話題になっている。これは、数学的にはESはElicitabilityを満たさないということに関連している。

今回紹介するペーパーは、Expected Shortfallは、VaRにはあるElicitabilityを満たさないことを最初に主張したものである。この辺の議論が、Fundamental Reviewにどう影響していくのか注視する必要がある。

Arbitrage-Free SABR

内容紹介

HaganらのオリジナルのSABRペーパー(2002年にWilmotte magazineで発表)から12年、いわゆるHagan近似では低金利下のもとでスワップション満期におけるさらに低いレートゾーンの確率密度が負になってしまうというという欠点を修正した、同じ著者らのArbitrage-free SABRのペーパーがこれまたWilmott magazineで発表された。

外資系金融機関ではすでにこの問題は修正済みのところが多いが、邦銀等はこれからSABRをインプリするところが多くあり、最初からこちらをインプリするか悩ましいところだろう。著者の経歴をみると、P.HaganやA.Lesniewskiも現役を退き(?)、大学で教えていることがわかり、時の流れを感じてしまう。
OTCクオンツスクールでSABRモデルを学んだ方々は、このペーパーはすらすら読めるはずだ。

Linearity-Generating Process, Unspanned Stochastic Volatility, and Interest-Rate Option Pricing

内容紹介

低次元のマルコフ性をもった金利の期間構造モデルでは将来のゼロクーポン債の価格(Reconstitution formula)は状態変数のexponential affineまたはquadraticとなる。例えば、Cheyette modelでは金利ファクターが1つでもゼロクーポン債価格を表す状態変数は2つとなり、一般的にイールドカーブを表すファクター数がmつ、ボラティリティーを表すファクターがnつのときは、すべての状態変数の数は m+m(1+m)/2+nとなる。

一方、ここでのLinear-generating processsを使うと、ゼロクーポン債は金利ファクターの数だけの状態変数のLinearとなり、金利のマーチンゲール部分のモデリングにはまったくよらなくなり、それゆえ、完全な"Unspanned Stochastic Volatility"モデルとなる。状態変数も、m+nつとなりモデルのインプリはかなり簡単となる。ボラティリティのマルチファクターのモデリングも参考になる。stochastic volのない金利モデルでは、金利のmean reversionだけで、スワップションのvolatilityのオプション満期方向とスワップテナー方向のvolの減少を説明するが、stochastic volにすることで、vol のmean reversionはオプション満期方向のvolの減少、金利のmean reversionはスワップ テナー方向のvolの減少を説明できるという記述は興味深い。また、金利とスワップションVolの時系列から、モデルのspecification analysisをおこなっている。このような分析はトレーディングで使えそうだ。
機会があれば、OTCクオンツスクールで"Unspanned Stochastic Volatility model"に関するセミナーも開催する予定だ。

Multifactor Portfolio Efficiency and Multifactor Asset Pricing

内容紹介

著者のEugene F. Famaは2013年のノーベル経済学賞を受賞した1人だ。授賞理由は金融資産の価格形成理論に貢献したことである。彼の研究の1つであるマルチファクターのアセット・プライシング理論に基づく実証分析が大きく貢献したことは明らかである。このペーパーはこのマルチファクター・アセットプライシング理論を記述した理論ペーパー。

もちろん、デリバティブ理論とは異なり、Expected returnがマルチファクターのリスクを織り込んでどう決まるかということが主題であり、ファイナンスのもう1つの理論もクオンツは十分に理解する必要がある。

リンクしたペーパーはすでにパブリッシュされていて、無料ではダウンロードできない。
機会があれば、OTCクオンツスクールで彼の理論に関するセミナーも開催する予定だ。

Counterparty Risk Valuation, A Marked Branching Diffusion Approach

内容紹介

著者のPierre Henry-LabordereがRisk Magazineの2013年"Quant of the year"に選ばれた際の論文。カウンターパーティーリスク (CVA) を考慮したデリバティブの価格がみたすSemi-linear PDEをFeynman-Kac formulaで確率的な解釈に直すと登場するMarked Branching DiffusionにMonte Carloを使って、CVAを求めるという内容。
この方法をとると、"Monte CarloのMonte CarloやLeast-squareのRegressionを回避でき、マルチ・アセットのCVAを効率的に求めることができると主張する。

最近、数理ファイナンスで話題となっているBSDE (Backward stochastic differential equation)やParticle methodについても学習できる非常に興味深い論文。

Pierre Henry-Labordereにしては読みやすい内容だが、式展開は端折っているところもあり、自分で計算する必要があるという意味でも読みごたえはある。
リンクしたバージョンはRisk Magazineに2012年に掲載されたもののフルバージョンでApppendixもある。

Recovery Theorem

内容紹介

金利のCIRモデルでも有名なMITのStephen A. Rossが2011年に “The Recovery Theorem” という金融アカデミック界、デリバティブ実務界を驚かせるワーキングペーパーを発表しました。
オプションプライスから原資産のローカル・ボラティリティー曲面が求まることは周知の事実ですが、このペーパーはオプションマーケットが予想する実世界(リスク中立ではなく)における原資産の将来分布を求めることができるということを主張するものです。

デリバティブ業界では、実世界の期待収益率は使わずにボラティリティーだけからデリバティブのプライシング、リスク管理ができますが、Recovery theoremのインプリケーションはリスク管理の様々なところで、実務に使えるポテンシャルを有しています。

例えば、VaR(バリュー・アット・リスク)、クレジットリスクのPFE(ポテンシャル・フーチャー・エクスポージャー)やストレス・テストは実世界のもとでの概念なので、オプションプライスからフォワード・ルッキングな実世界での原資産分布がわかれば、時系列データに頼ることなく、これらをより正確に実装することができます。
実際、時系列データでは企業の倒産や金融危機時の資産価格といったテール部分の分布の推定が困難です。

近々、Journal of Financeでパブリッシュされる予定。

Recovery Theorem講義資料(第1回)

内容紹介

シグマインベストメントスクールでRossのRecovery Theoremを教えています。
生徒数もおもったより多く集まってくれました。

セミナーは3回もので、初回の講義ノートがダウンロードできるようにしました。アカデミックな理論とデリバティブの理論の違いについてもふれてます。参考にしてください。

Adding FVA to the Unilateral CVA

内容紹介

双務的CVAを用いて無担保デリバティブを評価するという枠組みは終焉にきている。自分が倒産した場合の利得の現在価値であるDVAはレプリケーションできず、これをプラスの経済価値として、銀行がリスク管理することに無理があるからである。ここでは、片務的CVAにFVAを考慮した枠組みを考える。
2012年度冬期JAFEE大会で発表した論文。

現在はこちらからダウンロードはできません。JAFEEではページ数の制限があったので、いまフルバージョンの改訂版を準備中。